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 ――チチッ


 夜明け前、小鳥のさえずりで目を覚ます。


 私、先生に抱かれることなく朝を迎えてしまったみたい。女として意識されていない証拠だ。


 先生は隣の布団で爆睡している。とても穏やかな寝顔。

 何時まで執筆していたのかな。


 起き上がり隣室のテーブルに置かれた原稿を手に取ると、原稿の表には【完】の文字。

 第十章から最終章(第十二章)とエピローグまで、一気に書き上げたの?


 原稿は分厚く、全部で何枚あるのかすらわからない。


 凄い……。

 作家って、ストーリーに熱中するとこんなに一気に書けちゃうんだ。


 先生の魂のこもった作品。

 嬉しくて、愛しくて、原稿を胸に抱き締める。


 すぐに読みたいけど……

 今は読まない。


 私の思い描いたラストシーンと、先生の書いた結末が異なるとショックだから。

 この続きは、この作品が書籍化されたら拝読させてもらう。


 それまで……

 おあずけだ。


 私の恋も……

 おあずけ。



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