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 お風呂から出て客室に戻るとテーブルは綺麗に片付けられ、先生はすでに原稿を書いていた。


「ただいま戻りました……」


 室内に入るなり頭がクラッとし体のバランスを崩した私は、茹で蛸のようにぐにゃりと座敷に倒れ込んだ。


「君、どうした!?」


 先生が万年筆を置き、私に近付く。


「君、君、」


 パチパチと軽く頬を叩かれ、うっすら目を開ける。先生の顔が陽炎のようにユラユラと揺れて見えた。


「……お湯に浸かりすぎて逆上せたみたいです。横になっていれば大丈夫です」


「冷たいタオルを持ってくる」


「……はい。すみません」


 先生は隣室の襖を開き、躊躇することなく浴衣姿の私を抱き上げ二つ並ぶ布団の上に寝かせた。


 そして冷蔵庫から氷を取り出し、洗面所でタオルを冷水と氷に浸して固く絞ると、再び戻って来た。

 額にあてられたタオル、あまりの冷たさに悲鳴を上げる。


「……ひやっ」


「冷た過ぎたかな」


「……いえ、気持ちいいです」


「フロントに医者を頼もうか」


「その必要はありません。頭がボーッとして眩暈がしただけ……。さっきより落ち着きました」


 少しはだけた浴衣の裾を直したくても手が届かない。


 先生が私に顔を近付ける。


 まさか……?


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