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「いただきます」
甘口のお酒が、空っぽの胃袋にスーッとしみわたる。
「社員旅行だと宴会場でワイワイと食するのだな」
「はい」
「俺は企業で働いた経験はない。それ故、社員旅行がどのようなものかピンとこない。大勢で飯を食べるなど拷問に近い」
「先生、修学旅行には行かれましたよね?」
「修学旅行などくだらない。小中高全て欠席し自宅で小説を読んでいた。貴重な時間を無駄にしたくはなかったからな」
先生は偏屈だと知ってはいたが、ここまでとは。
「あとで露天風呂に行かれてはいかがですか?上司も部下も関係なく、露天風呂で裸の付き合いをする。それも社員旅行ならではの醍醐味ですよ。宴会場では各課の希望者が余興をして場を盛り上げます。恥を捨てて盛り上げないとシラケちゃいますからね」
「サラリーマンとは面倒な生き物だな」
「普段見られない意外な一面が見られるので、社員旅行も結構楽しいですよ。宴会はある意味無礼講ですからね」
「無礼講か。なるほど、君は社員旅行の経験は?」
「派遣社員も旅行に同行させて下さる企業もあり、何度か経験はあります」
「社員旅行で男と寝たことは?」
「……っ、そんな経験はありませんよ」
ていうか、社員旅行以外でもありませんから。
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