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私達は夫婦という設定。
だけど、いきなり二人で入浴するなんて。私はまだ花も恥じらう乙女だよ、初体験もまだなのに先生の前で裸体をさらすなんて、恋人同士でもないのに、絶対に無理!!
「せ、先生、私はあとで入ります。ゆっくりお湯に浸かって下さい」
「それもそうだな。では先に使わせてもらおう」
先生は平然としている。
どうして平気でいられるの?
私はこんなにドキドキしているのに。
先生全然わかってない。
火照った顔を冷ましながら、湯坂山と須雲川のせせらぎを眺め夕涼みをする。
――この数ヶ月、色々なことがあった。この風景を見ていると、辛かったことが全て洗い流される。
テーブルには視覚的にも美しい風情ある懐石料理が、次々と並べられる。
「奥様は箱根は初めてですか?」
「いえ、何度か来たことはありますが、このお宿は初めてです。竹林が美しく素晴らしいところですね」
「はい、皆さんそう仰って下さいます。ご主人様は普段も着流しですか?粋でございますね。先生と仰られていましたが、ご職業は作家さんですか?」
「よくお分かりですね」
「商売柄、お客様の職業は何となくわかるんですよ。どうぞごゆっくりお召し上がり下さい。隣室には床の用意をしております。食事が済まれましたら片付けに参りますので、フロントへお電話下さい」
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