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 ◇



 帰宅すると先生はすぐに机に向かい執筆を始めた。


「第八章は車中で瀬戸と情を交わした琴子が、一時の感情で過ちを犯し深い後悔の念に苛まれる」


「そこに上司の吉岡ですよね?いつも俺様で意地悪な吉岡が、琴子と瀬戸の関係に気付き、あっさり身を引くのはどうでしょう」


「あの吉岡が身を引くのか?」


「はい。一夜の関係ですが、琴子はずっと心のどこかで吉岡のことを気に掛けていた。社内で冷たくされればされるほどどうしてなのだろうと、吉岡に対する想いが募ります。でも嵐が去ったように突然相手にされなくなると、女性は寂しさと虚しさを感じるものです」


「女心とは不可解だな」


「琴子は瀬戸との関係ではどこか満たされない。吉岡との激しい夜を忘れ去れることができない」


「尚且つ女とは大胆な生き物だな。君も恋に溺れるとそうなるのか」


「……私ですか!?体験してないので、そんなことわかりません」



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