まひるside

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 素直に嬉しかった……。


 先生が私を心配し、東京駅まで迎えに来てくれた。

 桂木先生のことも、包み隠さず話してくれた。それが何よりも嬉しかった。


 思わず涙が滲む。感極まりお蕎麦の味がよくわからない。


「私、お屋敷に戻ります」


「当然だ」


 先生はぶっきらぼうに言葉を返す。私と先生の関係は上司と部下でも師弟関係でもない。

 ご主人様と家政婦。今まではそうだったけれど、私の心の中で先生は確実に違う存在になっていた。


 二人で向かい合い、お蕎麦を啜る。ただそれだけのことなのに、心がジーンと温かくなる。


 一晩離れていただけなのに、こんな感情を抱くなんて……。


「先生、また作品を拝読させて下さいね」


「帰宅したら直ぐに執筆する。ゆっくりしている時間はない。さっさと食え」


「はい」


 先生は偽りの恋人を演じてくれただけなのに、私は……先生のことが……。



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