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「味噌汁?」


 俺は何が言いたい。

 これで彼女に言いたいことが伝わるのか。


 蕎麦をズルズルと啜る。蕎麦粉の配分も絶妙でコシがあり確かに美味い。

 海老天も外はサクサクして身はぷりぷりしている。


 でも俺にとって一番のご馳走は……。


「先生……あの……。私、家政婦はもうクビなのでは?」


「誰がクビにすると言った?」


「だって……。桂木先生が……」


「彼女と俺はもう付き合ってはいない。俺は君を……コホン」


 言葉に詰まり、咳払いで誤魔化す。


「先生、お風邪ですか?」


「いや、つまり俺は君を……」


「はい」


「迎えに……」


「私を迎えに東京駅まで来て下さったんですか?」


「迎えに来たわけではない。恋人の振りをすると約束したから有言実行したまで。それに住み込みの家政婦に、ネットカフェで寝泊まりされると、世間体が悪いからな」


「……ネットカフェにも……行かれたんですか?」


「いいから、早く食え」


「はい。いただきます」


 彼女の瞳がなぜか潤んでいる。

 俺の気のせいか……?


 ポロリと涙が零れ落ちた。ワサビが効きすぎて泣いているのか?

 グスグスと鼻を啜る彼女。鼻ではなく蕎麦を啜れ。


 わけがわからず、俺は黙って蕎麦を啜った。


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