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向きにならなくても、そんなことはわかっている。
「すまん。同じ弁当をもう一つくれ。それと温かいお茶を二つ」
「はい、畏まりました」
俺は同じ駅弁をもう一つ買うと、さっき買った弁当と一緒に彼女の両親に差し出す。
「見送りに来ただけだ」
「私達に下さるんですか?まぁ……わざわざお見送りして下さる上に、お弁当まで。すみませんね」
「新幹線の中で食べてくれ。次に来る時は家に泊まればいい」
「はい。ありがとうございます。只野先生、ふつつかな娘ですが宜しくお願いしますね。華やかさはないけど、カレーについとる福神漬けみたいな娘ですから」
「福神漬け?」
「なくても困らないけど、ないと口寂しいみたいな」
まさにその通りだ。
流石母親だな、物の喩えは大喜利並みだ。
「母さん、福伸漬けだなんて失礼ね」
「らっきょうより、福神漬けの方が可愛いげがあるじゃろ。ねぇ先生」
両親は顔を見合わせケラケラ笑っている。
確かに、福神漬けはらっきょうより赤くて華やかだ。
「バカみたい。もう東京に来んでもええけぇね」
「はいはい」
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