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彼女が現れるまで、小説のあらすじを忘れないようにメモする。
第九章…… 第十章……
瀬戸と吉岡の間で揺れる琴子の前に、以前登場した取引先の男性社員中条。
女は人畜無害な癒やし系に弱いのか、はたまた鬼畜上司に弱いのか、王子様ともて囃されているイケメンの涙に弱いのか、……謎だな。
気が付けば午後一時を過ぎ、空腹に耐えかねた俺は改札の傍にある売店で駅弁を買う。
「只野先生?おやまあ奇遇だこと。旅行に行かれるんですか?まひる、只野先生よ」
「先生?どうしてここに……?」
――やっと見つけた。俺の迷い猫。
やはり見送りに来ていたのか。
「今何時だと思っている。俺がここで何時間待ったと思ってるんだ。十章まであらすじを考えたんだぞ。早く意見を聞かせろ」
「はぁ?」
彼女は目を丸くし、キョトンとしている。ご両親は口をあんぐり開けたまま固まっている。
「まひる、只野先生と旅行に行くんね?二十歳過ぎとるいうても、婚前旅行は賛成出来んよ」
俺が彼女と婚前旅行?
母親の問いに彼女も俺もぶるぶると首を左右に振る。
「先生、何仰ってるんですか?私、先生と旅行のお約束はしていませんよね」
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