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 まだ若干痛む腰を庇いながら、ネットカフェを出る。俺の予測通り、彼女はここに宿泊していた。

 だが、寸前で彼女を捕り逃がす。


 ここを出たなら多分あそこだな。でも、あそこは訪問しづらい。何故なら天敵とも言える一樹が、彼女の古巣に居座っているから。


 歩いて元担当のマンションを訪ねる。チャイムを鳴らすが応答はない。


 まさか駆け落ちしたのか?

 そんなはずはない。


 一樹は離婚も成立し現在は独身だ。セシリア社次期取締役社長という地位も名誉もある。駆け落ちする理由はない。


 元担当のマンションでないのなら……

 ご両親が宿泊している浅草のホテル?


 ホテルの名は聞いていない。宿泊先は皆目見当もつかない。


 彼女のことだ。ご両親と浅草見物し、東京駅に見送りに行くだろう。


 闇雲にうろうろしては腰に響く。こうなったら持久戦だ。

 東京駅で彼女が姿を現すまで待つしかない。


 迷い猫は捕獲しなければどこに消えるかわからないからな。


 東京駅に向かった俺は、東海道・山陽新幹線の中央のりかえ口でじっと彼女とご両親を待つ。ここで彼女に逢える保証はないが、必ずここに現れる気がしてならない。


 時間潰しに妄想を膨らませ、小説は第八章に突入だ。


 ――車中で瀬戸と情を交わした琴子は、一時の感情で過ちを犯し深い後悔の念に苛まれる。


 そこに……


「吉岡だな」


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