直人side

215

「冴えない女が、昨夜宿泊しなかったか?」


 俺の質問に店員は眉を潜める。


「お客様、そのような質問にはお答え致しかねます」


「御園まひるだ」


「名前を言われましても、個人情報はお答え出来ません」


「では強制捜査させてもらうよ」


「捜査?あなたは私服警察官ですか?着流しとは、警察も随分斬新ですね」


「捜査の妨害をするとためにならないが」


 店員は俺を私服警察官と勝手に勘違いし、慌てて調べ始めた。


「御園まひるさんは昨夜久しぶりに来店されましたが、今朝早く出られました」


「もう出たのか。捜査協力に感謝する」


「はい。彼女また何か事件に?確か……数ヶ月前の監禁事件の被害者ですよね。ニュース見ましたよ」


 店員が身を乗り出す。


「実は大事件なんだ。今朝味噌汁を作りに来なかった」


「は?味噌汁?」


「失礼」


「ちぇっ、私服警察官じゃねーのかよ」


「誰も警察官だとは言ってはいない。彼女を捜しているだけだ」

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