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『桂木由佳子先生が只野先生と付き合っていたとしたら、蓼食う虫も好き好きだね』


「悪かったわね」


『あれ?どうしてまひるが怒ってるのよ。もしかして……妬いてるの?やっぱり車の一件はそういうこと?』


「ち、違うわ。勘違いしないで。もう電話切るからね」


『まひる、只野先生に対する同情や、例の監禁事件で助けてもらった負い目から、あの屋敷でタダ働きしているなら、もうやめなよ。同情しても、只野先生の作品は商業化には結びつかないの。いいわね』


「そんなんじゃないよ」


『もし行くところがないなら、私のマンションで三人で暮らそう。戻っておいで』


 それだけは勘弁だ。

 あの狭いマンションで、みやこと編集長と私の組み合わせは完全にミスマッチ。

 気まずい生活を強いられるくらいなら、先生の家にいた方がいい。


「遠慮しとく。二人の邪魔したくないし」


 自分のことは自分で決める。始まりも終わりも、他人の力は借りない。

 住み込み可の新しい仕事を探さないと。


 桂木由佳子先生なら、先生の作品に私よりも的確なアドバイスが出来るはず。

 先生の未来も、変わるかもしれない。



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