まひるside

211

「痛い……」


 狭い個室、仔猫のように丸くなり眠る。

 こんなことなら、両親と浅草のホテルに泊まれば良かったな。


 宿泊代を支払ったのにネットカフェだなんて、自分のバカさ加減に呆れる。

 この空間には慣れていたはずなのに、ここ数カ所、毎日布団で寝る生活をしていたせいか、窮屈でならない。


 なかなか寝付けない。先生の家にいた女性の後ろ姿が妙に気になり、ムクッと起き上がる。


 ――そういえば、あの美しいシルエット。

 どこかで見た気がする。


 どこだっけ?


 携帯電話がプルプルと震える。みやこからの着信メールだ。


【まひる、おじさんとおばさんどうした?】


【みやこが余計なこと言うから、只野先生と鉢合わせだよ。今夜は浅草のホテルに泊まってる。明日広島に帰るって。】


【ごめん。おばさんの気迫に負けてつい白状しちゃった。浅草のホテルならいいや。別件で只野先生とまひるが揉めてないか気になったんだ。】


 別件?

 私と先生が揉める?


 もしかして……

 あの女性のこと?



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る