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彼女の瞳が眩しかった。
彼女の功績が眩しかった。
次第に彼女も俺を避けるようになり、俺は酒に溺れ他の女と初体験をする。彼女を裏切ることで、彼女を忘れることが出来ると思ったから。
だがその女は、関係を重ねるたびに俺に金を要求した。『親が入院した』『親に借金がある』『自分が病気になった』、その度に俺は女に何十万もの金を渡した。
結局、その女は結婚詐欺師だった。学生時代に得た栄光、公募で手にした賞金。その大切な金と僅かな預金を全額女に貢いだ。
『過去の栄光を捨て、ゼロから始めたかった』それは綺麗ごとだ。本当は女に騙された愚かな自分を、認めたくなかった。
「只野君、今一人で住んでるの?」
「いや、迷い猫と。君は?」
「私は一人。今は七社の連載に追われてる」
「羨ましい限りだな」
「只野君が今も小説を書いていると聞いて、私嬉しかったの。作家としてデビューして、只野君と疎遠になってからも、ずっと気掛かりだったから」
「俺は書くことしか能がないからな。同じキャリアなのに、君はベストセラー作家、俺はいまだに素人同然だ」
「卑屈な言い方しないで」
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