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彼女はご飯と味噌汁をよそい、俺に差し出す。付き合っていた頃は、彼女がこうして手料理を作ってくれたこともあった。
「では遠慮なく、いただくよ」
「はい。召し上がれ」
味噌汁を口に含む。
毎朝飲む味噌汁と比べると、何かが足りない。
「どう?」
「昔と変わらない味だ」
「そう、良かった。あれからもう八年になるのね」
俺達は書店で偶然出逢い、互いに作家を目指していることを知り親しくなった。
彼女は俺の初恋といっても過言ではない。
俺達は同じ道を歩み、同じ目標を持つ同志でもあった。だが、彼女の方が俺より先に夢を掴んだ。
俺は彼女の才能に嫉妬したんだ。
自分の作品に焦りを感じ、彼女の書籍デビューを心から祝福することが出来ず、次第に彼女を避けるようになった。
彼女のデビュー作は爆発的に売れ、彼女は幸運の階段を駆け上がりベストセラー作家になった。
そう、桂木由佳子と俺は交際をしていた。でも俺は彼女から逃げた。
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