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両親の気が変わらないうちに、電話で浅草のホテルを予約しスカイツリーに案内する。アルバイトで貯めたわずかな預金が、一晩でパーだ。
――東京ソラマチで夜景を眺めながら食事をする。
先生はちゃんと夕飯食べたかな。腰を痛め、思うように動けないはず。
先生のことが気になった私は、席を離れ先生にこっそり電話を掛けた。
『なんだ』
「先生、夕飯は済まされましたか?動けますか?」
『大丈夫だ。適当に食べるから気にしなくていい』
「昨日の肉じゃが冷蔵庫に少し残ってます。それと……今夜両親と浅草に泊まることにしました。先ほどは、両親へのお気遣いありがとうございました」
『そうか。明日の朝は君の味噌汁が飲めないんだな』
先生の言葉に何故か胸がジーンとした。
『久しぶりに逢ったのだろう。こちらのことは気にせず、親子水入らずでゆっくりするがいい』
「ありがとうございます」
先生と電話を切り、席に戻る。
――『明日の朝は君の味噌汁が飲めないんだな』
先生の言葉が何度も耳に甦る。
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