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 とにかくこの屋敷から連れ出す。阻止するには、それしかない。


「行くよ」


 荷物を掴み両親を引き連れて、屋敷を飛び出し駅に向かった。


「気難しげな人じゃけど、泊まらせてくれるなんて、案外優しいとこがあるんじゃね」


「家は古いが、世田谷にあれだけの土地があるということは、かなりの資産家じゃ」


 両親は世田谷の坪単価や先生の資産を、勝手に頭の中で計算している。


「二人ともええ加減にしんさいよ。父さんも母さんもスカイツリー見たことないんじゃろ。今からスカイツリーに連れて行くけえ。今夜はホテルに泊まってね」


「なんでね。先生が家に泊めてくれるのに、ホテル代がもったいないじゃろ」


「宿泊代は私が払うよね。一緒にホテルに泊まるけぇ、親子水入らずの方がゆっくり話が出来るじゃろ」


 電車に揺られながら、両親を必死で説得する。


 両親は不満そうな顔をしていたが、私がホテル代を支払うことで何とか話は纏まった。

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