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 これは一大事だ。

 先生の作品が書籍化されるチャンス。


 無愛想でへそ曲がりな先生に任せていては、せっかくのお話も水の泡だ。好印象を抱いていただくためにも、せめて完璧な接待を。


「いらっしゃいませ。すぐにお茶のご用意を」


 座敷に飛び込むと、そこには……!?


「父さん……母さん……」


「まひる、やっと帰って来たんね。ここに座りんさい」


「どうしてここがわかったの」


「お茶はええけぇ、はよ座りんさい」


 母は命令口調で、畳を掌で叩いた。


「……はい」


 両親の突然の訪問に、私は動揺している。頭の中でどう言い訳をすれば誤魔化せるか、アレコレと無い知恵を絞る。


「勤務先のスーパーに行ったら、店は変わっとるし、まひるが事件に巻き込まれた言うじゃないね。もう父さんも母さんもびっくりして、腰を抜かしそうじゃったよ。なんでそんな大切なことを親に言わんの」


 大騒ぎになるから言わなかったのに。誰から聞いたのよ。


「みやこちゃんと暮らしとる言うけえ、安心しとったのに。みやこちゃんのマンションに行ったら、ベランダの洗濯物に男物のパンツがぶら下がっとるし、まひるの居場所を聞いたら、ここにおる言うけえ慌てて飛んで来たんよ。そしたらこの男の人が……」


 みやこも意地悪だな。両親を広島に追い返してくれれば良かったのに、わざわざここの住所を教えるなんて……。


 嘘も方便と、諺にもあるでしょう。



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