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「瀬戸もこうなるかもしれないな。車中で女性に迫るなんて、もともと無謀なんだよ」


「瀬戸はこうはなりませんよ。瀬戸はもっとスマートで王子様のイメージです。車中でぎっくり腰だなんて、恋愛小説なのにそれではコメディだわ」


「瀬戸が王子様のイメージだと?じゃあ上司の吉岡はなんだ?」


「超俺様で自己中。セシリア社の編集長さんは自分と酷似していると勘違いしていましたが、どう考えても吉岡は先生そのものです」


「俺が嫌われ者の吉岡だというのか。だったら取引先の中条なかじょうはなんだ?」


「中条は癒やし系かな。ていうか先生、もう第七章ですよ。今さら、キャラのイメージを私に聞かないで下さいよ」


「女性目線で三人をどう捉えているか、確かめただけだ。女性は吉岡よりも瀬戸みたいなタイプが好きなのか?」


「それは人それぞれではないかと……。でも仕事でミスをした瀬戸を女性はほうっておけないかもしれませんね」


「成る程。母性本能を擽るというのか」


「強引にキスをされれば、瀬戸を嫌いになるかもしれません。でも瀬戸が目の前で悲しい目をしていたら……自分からキスをしてしまうかも……」


 彼女が俺を真っ直ぐ見つめる。狭い車内に沈黙が流れた。


 俺は腰を痛め動けない。


 彼女が……

 ゆっくりと瞼を閉じた。


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