刺激的なシチュエーション

直人side

186

 翌月、セシリア社の発行する週刊誌pamyuで、人気作家桂木由佳子が連載を開始すると、たちまち若い女性の間で大評判となり、pamyuは発行部数を伸ばした。その人気に後押しされ、秋刊行予定だった文庫本は、夏刊行されることとなった。


 正直、一樹のやり方は納得出来なかったが、契約書を読み返すと解除条件についても詳しく明記してあり、セシリア社とトラブルを起こすことは賢明な選択ではないと判断し、今回は潔く断念した。


 ◇


 彼女と同居し、三ヶ月が経過。


 スーパーKAISEIの店長が起こした監禁事件は世間を騒がせ、数名の女性が彼女の勇気に背中を押され、店長を告訴した。これにより店長は女性を騙し監禁したことや、盗撮サイトで働いていた女性達を【桃色恋愛カウンセラー】を介して男性に斡旋し、金銭を要求していたことなども認め、法的な裁きを受けることとなった。


 事件の影響を受け、スーパーKAISEI世田谷区店は閉店し、別の店舗となった。


 そして俺は、この三ヶ月歴史小説を書き続けたが、どの作品も出版社に認められず、相変わらず収入はない。


 彼女は午前中は家事をこなし、日中は近所の雑貨屋でアルバイト。夜は俺の執筆した恋愛小説を読みアドバイスをしてくれた。


 数か月が経っても、俺達の関係性は何も変わらないが、彼女の呼び方が『只野先生』から、いつしか『先生』へと変化したことを、俺は聞き逃さなかった。


 それが何を意味しているのか俺には分からないが、彼女との距離が縮まったようで妙に心地いい。

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