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執筆に没頭し、心身ともに疲れ果てた俺。
座敷にゴロンと寝転がると、座布団に座っていた彼女と目が合い、思わず飛び上がる。
「ずっとそこにいたのか」
「はい。気付きませんでしたか?」
「没頭していたからな」
「拝読しても……いいですか?」
「ああ、読んでくれ。率直な感想が聞きたい」
俺は執筆を終えたばかりの原稿を彼女に差し出す。
彼女は瞳を輝かせ、原稿を受け取った。
今までいくつもの出版社に原稿を持ち込んだが、どの編集者もつまらなそうな顔で数頁読んだだけ。
こんなに瞳を輝かせ、原稿を受け取ってくれた人はいない。
彼女はプロの作家でも、プロの編集者でもない。
それなのに、原稿を読みふける姿に、なぜか緊張する。
「どうだ?君のアドバイスを取り入れてみたが、上手く書けているだろうか……」
「只野先生」
「なんだ。またダメ出しか。遠慮なく言うがいい」
彼女は視線を上げ俺を真っ直ぐ見つめた。今までまじまじと見たことはないが、眼鏡の奥で大きな瞳が輝く。
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