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そんなことはわかっている。
気恥ずかしくて、彼女と色違いのストラップなどつけられないと遠回しに言っているのだ。
俺のお椀を持ち台所に立つ彼女……。
その小さな背中を見つめる。
鍋から味噌汁をよそう彼女に、ずっとここで働いて欲しいと思った。
朝食のあと、彼女は掃除洗濯をし、担当のマンションに荷物を取りに向かった。
彼女と俺の同居生活。
男女の関係はなく、彼女は住み込みの家政婦になった。
彼女に給料を支払うために、俺は何としても原稿を売らなければならない。
諦め掛けていた恋愛小説。
彼女が傍にいてくれたら、書けるような気がする。
担当から返却された原稿。
もう出版社の要望を意識することなく、俺の自由に書ける。
――第二章 欲望
オフィスでは上司と部下。
割り切った一夜の関係だったが、深みに嵌まったのは女ではなく男の方だった。
男は平静を装ってはいるが、女の周囲に蠢く新たな男の影を感じ、嫉妬から女に冷たくあたる。
再び交わることのない男女の関係は、次第に歪み亀裂を生じていく。
「第二章のあらすじはこれでよし」
愛とは欲望。
体が満たされないと心は満たされない。そしてまた心が満たされないと、体も満たされない。
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