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「コホン、小説の第二章が書けないだろう」


 小説!?

 そう……だよね。


「でも、その必要もなくなった。セシリア社と契約解除したんだ。pamyuの連載も文庫本の話も白紙だよ」


「……そんな」


「君を捜すために担当と祭に行き、酔って担当のマンションに泊まった。その翌朝、マンションで一樹と鉢合わせした。一樹は担当と俺の関係を誤解している。しかも俺の書いた原稿があの二人の関係と酷似しているらしい。従ってボツだ」


「酷い……。あんなに一生懸命書いたのに」


「もともと、ヒントをくれたのは君と……桃色だ」


「桃色……」


「桃色が店長に監禁されていた元愛人だったとはな。だが、俺はあのようなサイトにいつも書き込みをしているわけじゃない。勘違いするな」


「……はい」


「俺は君を……小説の主人公とイメージを重ね、利用するつもりだった」


「利用……」


「俺もあの店長と同じかもしれないな。私利私欲のために君の心を弄び利用しようとした。申し訳なかった。

 何も食べていないんだろう。何か作ってやる。座って待ってろ」


 スクッと立ち上がった只野さんの脚に、私は思わず抱き着いていた。



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