直人side

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「私……嬉しかった。絶望の中で……群青色さんの書き込みを見つけて、本当に嬉しかった……。きっと助けてくれると、信じていました」


「この俺を信じていたと?」


 彼女は脚に抱き着いていた手を解いた。


「はい。本当にありがとうございました」


 彼女は畳に三つ指をつき、俺に深々と頭を下げた。彼女に礼を言われ、複雑な思いが心を占める。

 人に礼を言われるなんて、妙にくすぐったい。


「まともな食事をしていなかったのだろう。何か温かいものを作る」


「ありがとうございます……」


 台所に立つ俺。

 背中に彼女の視線を感じ照れ臭い。


 満足に食事をしていない彼女のために、胃に優しい雑炊を作る。小さな土鍋がコンロの上でコトコトと音を立てた。


 ずっと一人で暮らしていた。

 あることがきっかけで人間不信に陥り、俺は他人と関わることを避けてきた。


 原稿と万年筆が、俺の気持ちを理解する唯一無二の親友だと思っていた。


 グツグツと煮える雑炊。吹き零れそうになり、思わず声を上げる。


「あちっ」


「大丈夫ですか?」


 彼女は慌てて台所に飛んできた。コンロの火を緩め、俺の指を掴むと冷水に浸してくれた。


「……すまない」





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