159
只野さんは私の手をぐいぐい引っ張って歩いている。
繋がれた手は、ゴツゴツしていて父の掌よりも大きい。
只野さんのお屋敷に着いた私は、一気に緊張が解け座敷にへたり込む。
あのマンションで殆ど熟睡は出来なかった。店長に寝込みを襲われる不安が常にあったから。恐怖と飢えで精神が壊れそうだった。その反面、生きるために店長に従うことも何度脳裏を過ったかわからない。
「君は世間知らずの大バカ者だな」
「……はい」
「うまい話が、そうそう転がっているわけないだろう。のこのこついて行くからだ」
「……はい」
「危害を加えられなかったのは、運が良かっただけだ」
「……わかっています」
「俺が通報しなければ、君は今も籠の鳥だ」
そんなに……
責めないでよ。
涙が溢れ……
嗚咽が漏れる。
「俺がどれだけ心配したと思っている」
「……ぇっ?」
「君がいなければ……俺は……」
まさか……
只野さんが……私を?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます