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 俺は一人で、世田谷から目黒に向かった。


 ホワイトバードマンションは、白い外壁の七階建てマンションだった。

 オートロックで簡単に内部に入ることは出来ない。マンションの住人が帰宅するのを待ち、住人がエントランス内部の自動ドアを開いた瞬間、一緒に滑り込む。


「どーも」


 マンションの住人は訝しげな顔で俺を見た。確かに俺の風貌は怪しい人物に見える。

 それは否定しない。極力怪しまれないように笑顔を作るが、ピクピクと顔は引き攣り変質者に見えなくもない。


 エレベーターの三階を押し、住人より先にエレベーターを降りる。


 三階は十室ある。このフロア全てをあの店長が所有しているというのか?

 十室の中から、どうやって彼女の部屋を探せばいいんだ。


 店長は今朝、スーパーKAISEIにいなかった。

 午後から出勤ということは、この部屋の何処かに潜んでいるのかもしれない。


 むやみにチャイムを鳴らせば、彼女に危害が及ぶ可能性もある。

 マンションの廊下に隠れる場所はない。


 どうしたものかと途方に暮れ、周囲を見渡す。廊下の中央に位置する場所に非常階段のドアが見えた。



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