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「ふふふ、小鳥ちゃん、また来るよ」


 店長が帰宅したあと、私は途方に暮れる。万一に備え、クローゼットに隠していたビスケットを取り出し一枚だけ食べた。


 貴重な食料だ。

 大切にしないと、粗末には出来ない。


 冷蔵庫には調味料しかない。あるのは水道水だけ。


 こんなことは、いつまでも通用しない。もし本当に食料を与えられず、水道を止められたら私は餓死する。


 生命の危機を感じた私は、一筋の救いを求めパソコンに視線を向ける。


【群青色さんこんばんは。料理好きの男性は若い女性には大人気。家庭菜園の新鮮な野菜を使った天ぷらは絶品です。】


 群青色が只野さんなのかもう一度確かめたい……。

 もし只野さんなら、この書き込みで私だとわかるはずだ。


 何故なら、家庭菜園や料理のことは、今まで相談されていない。

 この書き込みに無反応ならば、只野さんとは別人ということになる。


 そうなれば、この体を犠牲にしても、店長から鍵を奪うしかない。


「これが最後の賭け……」


 私はパソコンの前にじっと座ったまま、群青色からの返信を待った。



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