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 パラパラと原稿をめくる。女性から圧倒的な支持を受けている人気恋愛小説作家だけあって、確かにプロローグから惹き付けられる。


 只野先生との力の差は歴然だ。


「同じ大学の友人として只野先生に情けを掛けた。しかしそれは誤りだった。このプロットを読んだのか?まるで俺達みたいだな」


「編集長……」


「君が俺達の出逢いを只野先生に話したのか?俺は君にとって、こんなにも最悪な男だったとは。俺が嫌なら何故何度も抱かれた」


「編集長とのことは、只野先生に何も話してないわ。主人公の出逢いと設定は確かに似ていると思ったけど、私は編集長のことをこんな風に思ったことはない」


「第一章 蜜蜂

  男と女は一夜限りの相手と、偶然にも同じ職場で再会する。男は転勤先で女の上司となる。上司と部下、企業の中では絶対君主。

 情熱的な一夜を過ごした相手が、誰もが敬遠する嫌われ者の上司と知り女は愕然とする。だが、男との情事は女にとって忘れられない刺激的な一夜だった。

 頭では男を拒否するものの、一度上り詰めた体は本能的に男を求めている。社内では見せない男の甘い言葉と激しい夜を思い出し、体が疼き女は仕事に集中出来ない」


 編集長は第一章のあらすじを読み上げる。


「ベッドシーンもリアルに描かれている。あの夜を鮮明に思い出した」



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