みやこside

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「相武、ちょっと会議室へ」


「はい」


 編集長に呼ばれ、私は席を立つ。

 編集長の手には、只野先生の原稿と別の原稿が握られていた。


 会議室に入ると、編集長は外部から遮断するようにブラインドを下ろした。


「編集長、連載の件ですか?」


「いや、今朝のことだが、只野先生といつから付き合っている」


「付き合ってはいません」


「密会を目撃したんだ。言い訳は通用しない」


「職場でそのような話はやめて下さい」


「俺は妻と離婚協議中だ」


「……離婚?」


「君とのことを、真剣に考えていた」


「ご冗談を。契約を交わそうと仰ったのは編集長です」


「君を追い詰めたくなかったからだ」


「私を追い詰める?」


「不倫しているという罪悪感を押し付けたくなかった」


「……編集長」


 編集長は只野先生の原稿と、桂木由佳子(かつらぎゆかこ)先生の原稿を私の目の前に並べた。


「桂木先生の作品は完結している。勿論未発表作品だ」


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