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 彼女の姿が、亡き母と重なる。


 彼女の新しい勤務先を知りたい。


 彼女にもう一度逢いたい。


 彼女なしでは第二章は書けない。


 思わずパソコンを開いたが、すぐさま閉じた。


 桃色の返答を思い出したからだ。


 ――【桃色から群青色さんに、もう何もアドバイスすることはありません。これにて無料カウンセリングは終了とさせていただきます。】


 夜道で辻斬りに遭ったくらいの衝撃。冷たい言葉は人を斬り殺すほど残酷だ。


 だが、待てよ。

 確か……無料カウンセリングと書いてあった。有料ならば答えてくれるのか?


 恋愛カウンセリングに金を払えと?インターネット上での精算はクレジット払い?

 無料サイトといいつつ、結局は金を巻き上げるつもりなんだ。


 桃色は善人ではない。

 神でも天使でもない。


 俺は残念ながら、クレジットカードは一枚も持ち合わせてはいない。


 現金主義者だ。

 カードが金を生み出すとは、思えないから。


 執筆も振るわず、気分転換に庭に出て家庭菜園に時間を費やす。

 雑草を抜きながらあれこれと妄想するが、やはり農作業では第二章は閃かない。


 ふと担当と一樹の関係が頭を過る。


 事実は小説よりも奇なり。

 確かにそうだ。


 下手な恋愛小説よりも、リアルが一番ドラマチックで面白い。



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