121
担当は俺を残し、そのまま駅に向かった。
一樹と男女の関係を持ちながら、職場で平然と仕事をしているなんて担当も意外と図太いな。
一樹も一樹だ。不倫でオフィスラブとは、次期社長のすることか。
――帰宅した俺は、原稿用紙を取り出し第二章の執筆を始めた。
主人公は同じ職場にいながら、上司との情事を引きずっている。
小説の主人公は彼女なのに、彼女が消えた途端、脳内で担当と一樹の淫らな姿がちらつき筆が思うように進まない。
彼女は俺のことをストーカーだと思っていたのだろうか。
ここに宿泊した彼女は、俺の原稿を読みながら目を輝かせていた。
彼女に嫌われていたなんて、想定外だ。
こんな時、桃色に相談出来たら……。
パソコンを開きかけ、思いとどまる。
今さら桃色に相談なんて出来ないな。
【カウンセリングは終了します】と、けんもほろろに突き放されたんだ。
擦りきれた畳の上に、ゴロンと寝転がる。台所に目をやると、炊事している彼女の後ろ姿を思い出した。
あの日、俺は彼女の背中を見つめながら、台所に立つ母の後ろ姿を思い出したものだ。
母は専業主婦で控えめな女だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます