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 俺はネットカフェを出て、担当と祭に向かう。

 予約もしないで入店した俺達は、席が空くまで店内で待たされた。


 運よくキャンセルが入り、二階の座敷に案内される。


「お客様、ご注文は何になさいますか?」


「私は生ビールでお願いします」


「俺は日本酒で」


「はい畏まりました。お料理は如何致しましょうか」


「この店で一番安い料理を頼む」


 店員は一瞬眉を顰めて俺を見た。


「大丈夫だ。心配しなくてもいい。金はこの女性が払う。断じて食い逃げはしない」


「まぁ、お客様ご冗談を。本日はお酒に合うお料理を一品サービスさせていただきますね」


「サービスなら遠慮なくいただく。君、ちょっと聞きたいのだが、昨夜冴えない女性とスーパーKAISEIの店長がここに来なかったかね?」


「冴えない……女性でございますか?KAISEIの店長さんと眼鏡を掛けた若い女性なら、昨夜来店されましたけど」


 眼鏡、若い女性……

 やはり彼女なのか……?


「スーパーKAISEI?只野先生、KAISEIの冴えない女性って、もしかしてこの女性ですか?」


 担当が携帯電話の画像を俺に見せる。そこには彼女と担当が頬を寄せ合い、ニッコリ笑っている写真が複数保存されていた。

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