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◇
スーパーの帰りにネットカフェに立ち寄った俺は、彼女が姿を現すまでネットカフェに連泊するつもりだった。
狭い個室。目の前には一台のパソコン。全身を伸ばして横になることも出来ない。
こんなところで彼女は寝ていたのか。まるで捨て猫だな。
やはり、俺には連泊など無理だな。圧迫感のある窮屈な個室の中は耐えられず、自販機の前に置かれたテーブルに座る。壁側のカウンターにもパソコンが置かれ、若い男女が無表情のままパソコンを閲覧していた。
夜になっても、彼女は姿を見せなかった。あるのはスーパーの袋に入った卵のパックだけ。
腹が減った……。
空腹を満たすためには、コップに生卵を割って飲むしかないのか。とんだ夕食だ。
「只野先生ではありませんか?」
背後から突然声を掛けられ、振り返る。
「君はセシリア社の……」
いきなり姿を現したのは、生意気な俺の担当だった。
「只野先生、立派なお宅があるのにネットカフェですか?こんな場所でお逢いするなんて意外ですね」
「好き好んでここにいるわけではない。女性を待っている。君もネットカフェに泊まるのか?住まいもないなんて、出版業界も不況なんだな」
「違います。私は友人を待っているんです」
「それは奇遇だな」
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