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「困った……」


 桃色のアドバイスが受けられなくなり、俺は途方に暮れる。


【群青色さんはその女性のことをどのように思われていますか?本気で交際したいと思われていますか?】何度も何度も桃色の質問が脳裏を過る。


 不意に彼女の顔が浮かび、無性に逢いたくなった。

 イライラした時は、まずは安定剤だ。


「買い物に行くとするか」


 第二章はまだ何も書けてはいない。あの口煩い担当が、またギャンギャン騒ぐだろう。

 その前に彼女に逢って、何とかしなければ……。


 『初めてのデートは、映画かコンサート』。桃色からの最後のアドバイス。

 大勢の人が集う場所は苦手だが、アドバイス通り彼女を映画に誘うとしよう。そうすれば、何かヒントが浮かぶかもしれない。


 スーパーKAISEIに行き、キョロキョロと周囲を見渡していると、俺をジロジロ見ていた男性店員と目が合った。

 

「そこの君、いつも見掛ける冴えない女性は?」


「冴えない女性?」


「俺に生卵をぶちまけた女だ」


「ああ御園ですか?御園なら退職致しました。いい歳をして、退職した女性にまで、付きまとわないで下さいよ」


「この俺が、彼女に付きまとう?」

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