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男性がクスリと笑う。
「君って面白いね。みやこが追い出せないわけだ。弊社を受けたらしいね。人事部の面接官は見る目がなかったのかな」
「……いえ。緊張して質問に上手く答えられなくて」
「アルバイトなら随時募集してるよ。お邪魔したね」
「……すみません」
爽やかで大人な雰囲気。
みやこが恋に落ちた理由がわかる気がする。既婚者でなければ、何の問題もないのに。
彼と玄関先でキスを交わすみやこに、思わず背を向けた。ドキドキと高鳴る鼓動をシャットアウトするように、バタンとドアが閉まる。
「まひる、飲み直さない?」
みやこと彼の会話を聞いてしまった私は、とても気まずい。
「みやこ、ありがとう」
「何よ、急に」
みやこは缶酎ハイをグラスに注ぐ。灰皿には吸いかけの煙草。
「ごめんね。また彼、追い出しちゃった」
「いいのよ。ちょっと立ち寄っただけだから。今夜は奥さんの誕生日なんだって。だから家に戻ったの」
「みやこ……。それでいいの?」
「彼との関係は会社では上司と部下だけど、私生活ではただの男と女。既婚者でも関係ない。彼は左手の指輪を外せないの。だから私も彼以外の男性と時に一夜の恋を楽しむ。私ね、彼と愛人契約してるの」
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