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 ――マンションに帰宅すると、珍しくドアの鍵が開いていた。


 玄関にはみやこのハイヒールと黒い革靴。勿論男性の靴だ。


 まずいところに……

 帰宅したかな。


 そっと玄関のドアを閉めようとした時、みやこの声がした。


「まひる、お帰り」


「……っ、みやこ。ただいま」


 私は室内を指差す。

 ジェスチャーで、『彼氏がいるのか』と問う。


「上がれば?この間もう逢ってるんだし。初対面じゃないでしょう」


 この間…?

 例の…既婚者!?


「いいの?お邪魔でしょう?すぐに外出するから」


「いいよ。気にしないで」


「私、夕食済ませたから、部屋にいるね」


「もう、気を使い過ぎだよ」


 みやこは笑ってるけど、気を使うに決まってる。


 相手は既婚者、不倫中の相手にどんな顔して逢えばいいのよ。

 恋愛は自由だけど、不倫は賛成できない。


 ダイニングルームに人の気配を感じながら、こそこそと自分の部屋に入りドアを閉めた。

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