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 祭の二階は個室のお座敷。小料理店とはいえ隠れ家的な趣があり、予約なしでは入れない高級店だ。一階は常連客が集うカウンターになっている。


 二階のお座敷で、以前社員さんの送別会をしたことがあるから、これで来店は二度目。でも、今日は二人きりなんだよね。派遣社員には贅沢すぎる。


「お客様、こちらへどうぞ」


「……はい」


 一階のカウンターだと思っていた私は、二階に案内され驚いている。お座敷の中央には大きなテーブルがあり、座布団が二つ並べてあった。二人きりなのにお座敷だなんて、妙に緊張する。


 暫くして再び襖が開き、店長が姿を現す。先ほどまでの厳しい表情とは異なり、とても穏やかな顔をしている。


「わざわざ呼び立ててすまないね」


「いえ……」


「お客様、お飲み物はどうなさいますか?」


「御園さん、日本酒とビールどちらがいい?」


「……ビールでお願いします」


 これが契約解除の話なら、飲まずにはいられない。


「じゃあ、ビール二つ。料理はお任せするよ」


「はい、畏まりました」


 店員が座敷を出たあと、すぐに店長は私に視線を向けた。


 その眼差しに、トクンと鼓動が跳ねる。

 いたたまれなくて、視線を逸らした。


 クビならクビって、早く言ってよ。

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