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 ◇


 翌日午後六時半、只野さんがKAISEIに来店。


「いらっしゃいませ。先日はありがとうございました」


「また困った時はいつでも利用するがいい。これは友達として言っているのだ。変な意味はない」


「はい」


 相変わらず、不器用な人だな。


「お仕事上手くいくといいですね」


「何故だ」


 いけない。昨日みやこの話を聞いて、私の方が不安になり、……つい、口走ってしまった。


「只野先生のお顔がとても穏やかなので、そう思っただけです」


「俺の顔が穏やか?いつも俺は穏やかだ」


「……失礼しました。本日は精肉がお安いですよ。お弁当も半額になっています」


「そうか」


 只野さんはそのまま精肉売り場へと向かう。


「取っ付きにくいけど、根はいい人なんだよね」


 ボソッと独り言を呟く。


「御園さん、誰がいい人だって?彼はやめた方がいいよ。変わり者だって噂だから」


「て、店長!?」

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