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「これを読んで欲しい」


「……これは?」


「第一章を書いた。読んで率直な感想を聞かせて欲しい」


「私が編集者より先に読んでもいいのですか?」


「君だから、読んで欲しい。女性の意見を聞かせてくれ」


「はい」


 彼女は箸を止め、原稿を読みふける。


「あの……。この上司と女性の関係性……とても面白いと思います。恋愛小説にはありがちな設定ではありますが、上司のキャラが個性的で興味深いですね」


「本当にそう思うか?」


「はい」


 俺の力作をありがちな設定と言い切るとは素人ながら手厳しいが、若い女性の賛同を得て少しだけ自信が持てた。


 女性と一緒に迎えた朝。

 性的なことは何もしていないのに、何故か気持ちは満たされている。


「只野先生、一晩お世話になりました。ありがとうございました」


「問題ない」


 彼女は朝食を済ませると食器を綺麗に片付け、再度俺に礼を述べ帰宅した。

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