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「刺激的な恋……。スパイスのきいた……ピリッとするような、一瞬で体に電流が流れるような恋でしょうか」
「わさびや七味のように舌がヒリヒリするような刺激?それで女は感電するのか?」
……っ、答え方を間違えたかな。
「いえ…そうではなく」
「わさびや七味でないなら、胡椒や辛子か?いや鷹の爪?」
只野さんは料理のスパイスには詳しいようだ。
「女性がときめくのは、男性の言葉や仕草。性的なことではありません。寧ろ女性は肉体的なことよりも、精神的なことに刺激を求めています」
「精神的なこと?」
「男性の何気ない一言で、女性はドキドキしたり胸がキュンとしたり。キスを交わすよりも、ある意味刺激的かと」
「……成る程。胸キュンとはそういうことか」
只野さんはいきなり箸を置き、部屋の隅に置かれた机に座ると、原稿用紙にカリカリと万年筆を走らせた。
「只野先生?」
「俺に話し掛けるな」
「すみません」
私はその様子を眺めながら、食事を続ける。一心不乱に万年筆を走らせている背中は、いつもの只野さんとは別人のようで、小説家という職業がとても魅力的に思えた。
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