68

「俺が寂しい?俺は快適な生活をしている。強いて言えば、収入があればいうことはないが、連載が決まったから、それもすぐに解消される。丼物は熱いうちに食え」


「はい。いただきます」


 お味噌汁を口に含む。口の中で懐かしい母の味がした。


「美味しい……」


「褒めても、それ以上何も出ないぞ」


「あの……差し出がましいようですが、小説の執筆は順調ですか?」


「何故そんなことを聞く。順調に決まってるだろ」


「どの原稿用紙にも、刺激的しか書かれていないので…」


「……っ」


 只野さんは慌てて畳に散らばる原稿用紙を掴み、丸めてゴミ箱に投げ捨てた。


「只野先生、何かお困りなことでも?泊めていただくお礼に、何か私に出来ることはありませんか?」


 只野さんがまじまじと私を見つめた。その真剣な眼差しに、思わず怯む。


「わ、わ、私は友達として、言ったまでです。誤解しないで下さい」


「そんなことはわかっている。君と俺は友達だ。ならば参考までに問う。刺激的な恋とは何だ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る