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木の門扉がギーッと音を鳴らした。
門扉から玄関までは数メートル。雑草が生えた無法地帯だ。
玄関の引戸は木に覆われ、半分しか開かない。前回訪問した時は朝だった。夜と朝は雰囲気が異なる。
只野さんはガチャガチャと鍵を開けると、ぶっきらぼうに声を掛けた。
「上がれ」
「……お邪魔します」
敷地は広く、屋敷の建坪も大きい。築年数は古いが豪邸には違いない。手入れすれば、見栄えもよくなるのに。
希少な純和風建築を、荒らしておくなんて、勿体ないな。
廊下がミシミシと音を鳴らす。通されたのは使い古した台所と隣接する十畳の和室。部屋中央には座卓があり、隅には小さな机と座布団。その上にはノートパソコン。ここは居間兼只野さんの書斎なのかな?
「夕食はまだだろう。何か食うか」
「食事なら私が作ります」
「君が?他人に台所を荒らされるのは好まない」
「……すみません。出過ぎたことを言いました」
まるで女みたい。
台所は、まさかの女人禁制?
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