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 バッグに入れていた携帯電話が、ブーブー音を鳴らす。

 こんな時に、よりによって母からのメールだ。


 携帯電話を取り出し内容を確認する。


【まひる、恋人が本当にいるなら、話をさせてや。】


 何よ、いきなり。


【まひるが嘘をついとるって、父さんが言うんよ。】


 鋭いな。

 もう嘘を見抜かれてる。


 目の前には只野さん。

 溺れる者は藁をも掴む。


「あの……只野先生。お願いがあります。唐突ですが、私の恋人の振りをしていただけませんか?」


「この俺が君の恋人の振り?」


「両親が結婚結婚って、煩くて。お付き合いしてる人がいると、つい嘘をついてしまいました。そしたら、その人と話をさせろって……」


「成る程、俺の両親も生前は『早く結婚しろ』と煩く言っていたから、君の気持ちはよくわかる。ひとつ条件がある。嘘の片棒を担がせるなら、その代わりに今夜家に宿泊して欲しい」


 嘘の代償に、私のカラダを……!?


「断じて、性的な要求はしない」


 …っ、まじで?


 ますます怪しいんだけど。

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