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「……でも」


 ていうか、一夜の相手であっても既婚者なら、不倫は不倫だ。


「まひる昨日はごめん。またネットカフェに泊まったの?私が誰か連れてきても、まひるは部屋にいていいんだよ。気にしないで」


 私が嫌なのよ。でも、みやこはわかっていない。


 みやこの声、壁が薄いから筒抜けなんだ。女はみんな、行為の最中にあんな声を出さなければいけないのかと思うと、未経験の私は恐怖すら覚える。


「私はいいの。ネットカフェ好きだから」


「パソコンなら部屋にあるのに。いつも気を使わせてごめん」


「こっちこそ、ごめん。早く出て行かないといけないのに。ずっとこのマンションに居座って……」


「正社員になるまで、ここにいていいからね。あーいけない。遅刻しちゃう」


 みやこはバタバタと洗面所に入り、タオルで顔を拭きながら自室に飛び込むと、数分で身支度を整え部屋を飛び出した。


 所要時間、五分。早業だな。

 美人は得だね。すっぴんでも十分通用するから。


「まひる、いってきます」


「いってらっしゃい」


 みやこに只野さんのことを相談したかったけど、出来なかった。みやこは只野さんの担当なんだよね。だとしたら、交際を申し込まれたことは言わない方がいいのかな。


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