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「わかった、わかった。もう切るけぇね」


『今度広島に連れて帰りんさいよ。母さんも父さんも挨拶せんといけんじゃろ』


「はいはい。そのうち紹介するけぇ。おやすみ」


 私は今ネットカフェなんだよ。そんなセレブと交際しているなら、こんなところに泊まったりしない。


 こんなことなら、只野さんが地方新聞で受賞した小説のタイトル、聞いておけば良かったな。


 ◇


 翌朝、携帯の目覚ましで起床する。


 出勤する前に着替えたくて、ネットカフェを出てマンションに戻った。


 恐る恐るドアを開けると、玄関に男物の黒い革靴があった。


 玄関にはみやこの上着、廊下にはスカート。みやこの部屋の前には破れたパンスト。

 蛇が脱皮したみたいに、点々と洋服が落ちている。


 やっぱり……ね。


 みやこの洋服を拾い、脱衣所のカゴに入れる。


 物音を立てないように、みやこの部屋の前を忍び足で通り過ぎ、自分の部屋に入った。


 セーフ……


 洋服を着替え、みやこ達が起きる前にマンションを脱出しなければ。


 これではまるでコソ泥だ。


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