42

『まひる、ほんまなん?』


 鼓膜がキンキンするくらい甲高い声。娘の恋バナに興奮している様子がありありとわかる。


『有名な作家って誰なんね』


「まだ言わん。有名な人だから、母さんが人にペラペラ喋ったら困るけぇね」


『世田谷に豪邸があるなんて、億万長者?どこでそんな人を見つけたん?』


「そんなんどうでもええじゃろ。根掘り葉掘り聞かんでや。恋人がいるんだから、もう煩く結婚、結婚って言わんでね。お見合い写真ももう送らんでよ。じゃあ、切るよ」


『まひる、その人絶対逃がさんのよ。そんな人もう二度と捕まえられんよ。ええね』


 只野さんだよ。

 正直、親密になりたくはない。


 でも母には恋人だということにしておこう。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る