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【派遣社員でも、仕事忙しいんよ。もう少し落ち着いたらみやこのマンション出る予定だから。】


【みやこちゃんのマンション出るん?派遣の給料で生活出来るんね?いい人はまだできんの?】


 本当にうざいな。


 定職なし、住処なし、恋人なし、と母から思われている。二十八歳にもなると、未経験でいることも恥ずかしい。


 ふと、只野さんの顔が浮かんだ。


 只野さんの名前……

 ちょっと借りてもいい?


 ほんのちょっとだけ。

 母を黙らせるために。


【今日交際申し込まれたんよ。その人と付き合うことにした。三十歳で有名な作家。世田谷の大豪邸に住んどるセレブな人だから、心配せんで。】


 送信直後、すぐに電話が鳴った。


 シマッタ。

 母を黙らせるつもりが、母の気持ちに火を点けたようだ。


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