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 だけどネット上に、只野直人という作家も作品も表示されない。


「おかしいな。著者名は本名とは違うのかな」


 狭い空間でポチポチとパソコンを叩く。どんなキーワードを入力しても作家只野直人には辿り着けない。


 バッグの中の携帯電話がプルプルと震える。携帯電話を掴んで画面に視線を向けるとメールの送信元は母だった。


【まひる、元気にしとる?もう二十八歳。いい人はまだできんの?定職にもつかんと、みやこちゃんにいつまでも迷惑掛けたらいけんよ。】


 またか。

 週に一度必ず同じ内容のメールがくるんだ。


 二十八歳の娘の行く末を案ずるのはわかるけど、私だって好き好んで独身でいたいわけではない。


 好きで契約社員をしているわけではないし、好きでみやこのマンションに転がり込んでいるわけでもない。今夜だって、好きでネットカフェに泊まっているわけではないのだ。


 でもこのメールを無視すると、必ず電話が掛かってくるんだよね。


 直接話をしたくなくて、仕方なく母に返信する。


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