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「これも何かの縁だ」


「は?」


 一度食事に付き合えば、水に流すと言ったでしょう。


「時々逢ってくれないか」


 私と?個人的に?


「あの……私には同居人が」


「束縛しない相手なんだろう。相手が自由に浮気するなら、君が俺と付き合っても文句は言えないだろう」


「私が只野先生とお付き合いですか?そんな大それたこと出来ません」


 ていうか、怖いよ。只野さんのこと何も知らないんだから。


「ずっと気になっていた。ずっと好きだった」


 このセリフ…

 一日に三度聞いた。


 本当に私のこと好きなのかな?


「今朝は失言を吐いた。女性と話すのは苦手だ」


 それはヒシヒシと伝わってくる。言葉が断片的だから。

 小説みたいにときめくような告白じゃない。


 只野さん、本当に不器用なんだね。

 そんなに私のことを想ってくれてるの?


 ボサボサの頭……顎髭……

 だらしない風貌。決して魅力的ではない。


 でも……

 よく見ると優しい目をしているな。

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