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否定するつもりだったのに、思わず只野さんと目が合い、否定しない方が得策かもしれないと咄嗟に感じ肯定した。
「……同居人はいますが、お互い束縛しない約束なので」
「成る程。同棲相手を部屋から追い出し、このような場所に追いやるとは。束縛しないとは、浮気も黙認ということか?君は男を見る目がないな」
あなたを選ぶよりはマシだよ。それに本当は気心の知れた女友達だし。
もし本当に恋人に浮気されたらショックで立ち直れない。私はそんなに大人じゃないし、精神的に強い女でもないから。
入店してすぐテーブルに着き、ビニール袋から幕の内弁当を取り出すと、只野さんはもぐもぐと食べ始めた。
一体何を考えているのか、さっぱり掴めない人だな。戸惑いながら私もビニール袋から弁当を取り出す。
「俺は作家だ」
それはわかってますってば。
「作家もたまには行き詰まることもある」
行き詰まる?
只野さん、行き詰まってるの?
「あの…何かお困りですか?」
「実は恋愛小説の連載が決まった」
「それはおめでとうございます」
連載は知ってる。みやこから聞いているから。
「君は俺に何度も卵をぶちまけた」
「……すみませんでした」
まだ根に持ってるの?
執念深いな。
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